鋳銭坊
『武蔵野話』の秩父郡黒谷村の節には「鋳銭坊」(ドウセンボウ)という地名が見えます。この秩父郡黒谷村というのは今の埼玉県秩父市黒谷のことですが、「鋳銭坊」そしてその別名として『武蔵野話』で挙げられている「鋳銭沢」という地名を、私の調べた範囲では、見つけることが出来ませんでした。では、今で言うとどのあたりだったのでしょうか。
まず、『武蔵野話』での記述を見てみましょう
「その村中に
鋳銭坊 鋳銭沢とも云 などいふ地名あり、また近 村に金崎、金沢などいふ地名 もあれば銅の出し地 此村なるべし。」
黒谷村(現秩父市黒谷)は今でも和銅遺跡などの遺跡があるようにかつて銅の採れた場所で、そのことが書いてあります。
続いて『新編武蔵風土記稿』を見てましたが、ここには「鋳銭坊」の地名は見られませんでした。しかし、この書の黒谷村の節には「銅洗堀」、「和銅沢」という地名が見られるのでこれらの地名との関係がある可能性があります。
「小名 箕山一作簔山 曽根坂 銅洗堀 上小川 下小川 木毛 下川 中ゾリ」
「サテ其和銅ヲ出セシ地ハ当村ノ箕山ナリトモ云ヘト凡千余ノ星霜ヲ経ヌレハ其所モ定ニ知リカタシ」
「中断セシ所ヲ今ニ和銅沢トヨヘリ」
このうち「銅洗堀」は「鋳銭坊」に発音が比較的近いのでこの地名について調べてみました。すると、「銅洗堀」という地名はまだ生きているようで、「和銅遺跡」を参考にすると「どうねんぼう」と呼ばれることもあるようであり、恐らくこの周辺が「鋳銭坊」だったのだろう。
今度秩父へ行く機会があったらいって直接みてみたいし、今度は付近の寺院との関係も調べてみたいです。
参考文献
『武蔵野話』
『新編武蔵風土記稿』
「和銅遺跡」